ブランディングの進め方|「調べる・決める・育てる」9ステップで、小さな会社でも”選ばれる理由”はつくれる

栢原陽子
栢原陽子

この記事は、ブランディングが大事なのは分かっているけれど、何から始めればいいか分からない経営者に読んでほしいと思って書きました。

「うちもブランディングをしたほうがいいのは分かっている。でも、何から始めればいいのか分からない」。

中小企業の経営者から、よく聞く悩みです。ロゴを変えるのか、ホームページを作り直すのか、SNSを始めるのか。手段がたくさんありすぎて、手が止まってしまうのです。

ブランディングには、進める順番があります。順番どおりに進めれば、大きな広告費をかけなくても、小さな会社が「選ばれる理由」をつくることはできます。

この記事では、ブランディングの進め方を「調べる・決める・育てる」の3つの工程と、9つのステップに分けて、ひとつずつ解説します。各ステップをさらに詳しく説明した記事へのリンクも用意しました。

この記事でわかること

  • そもそも「ブランド」とは何か
  • お客さんがブランドを選ぶ4つの理由
  • ブランディングの3工程と9ステップの全体像
  • 始める前に考えたい3つの問い

ブランドとは「お客さんの頭の中に生まれるもの」

ある商品やサービスが、お客さんによって「ほかとは違う、あれ」と見分けられているとき、その商品やサービスをブランドと呼びます。

ここで大事なのは、ブランドは会社の中ではなく、お客さんの頭の中に生まれるということです。会社が「うちはこういうブランドです」と言っても、お客さんがそう感じていなければ、ブランドにはなりません。

高級品や有名企業だけがブランドなのではありません。値段に関係なく、「この会社なら約束を守ってくれる」と思われているものは、すべてブランドです。町の工務店にも、商店街のパン屋にも、ブランドはあります。

そしてブランディングとは、お客さんの頭の中に「○○といえば、あの会社」という印象を、狙って育てていくことです。

お客さんがブランドを選ぶ4つの理由

お客さんは、なぜブランドのある商品やサービスを選ぶのでしょうか。理由は、大きく4つに分けられます。

ブランドが選ばれる4つの理由

  • 見つけやすく、買いやすい:情報が整理されていて、迷わず選べる
  • 期待した価値が得られそう:これまでの経験や評判から、品質を期待できる
  • 自分らしさを重ねられる:世界観やストーリーに共感し、自分を表現できる
  • 失敗のリスクが減る:信頼と保証があるので、お金や時間をむだにする不安が少ない

注目したいのは、4つのうち後ろの2つが「感情の価値」だということです。お客さんは、機能や値段だけでなく、共感や安心といった気持ちの部分でも選んでいます。

だからこそ、ブランディングは「いい商品をつくる」だけでは足りません。誰に、どう見られたいかを決め、その印象がお客さんに届くように、言葉も見た目もふるまいもそろえていく必要があります。

栢原陽子
栢原陽子

ブランディングというと「デザインの話」と思われがちですが、じつは経営の話です。誰に選ばれたいかを決めるところから、一緒に整理していきましょう。

ブランディングの進め方:3工程と9ステップ

ブランディングは、調べる → 決める → 育てるの3つの工程で進めます。それぞれの工程を、さらに小さなステップに分けたのが、次の9ステップです。

ブランディングの3工程と9ステップ。調べる(目的と範囲、想い・背景、お客さん・市場・競合)、決める(誰に選ばれたいか、ポジション、ありたい姿、人格と表現ルール)、育てる(ストーリーを伝える、一貫性・意図・継続)

まずは、9つのステップで「何をして、何が決まるのか」を一覧で見てみましょう。

9ステップ早見表

ステップやること決まるもの
① 目的と範囲何のために、どこまでやるかを決めるゴールと優先順位
② 想い・背景創業のきっかけや大切にしてきたことを書き出すブランドの芯
③ お客さん・市場・競合お客さんの声、市場の変化、ライバルの言葉を調べる勝てそうな場所の候補
④ 誰に選ばれたいかいちばん喜んでくれるお客さんを決める届ける相手
⑤ ポジション「何の会社」と覚えられたいかを決める選ばれる立ち位置
⑥ ありたい姿目指す姿とお客さんへの約束を言葉にする軸になる言葉
⑦ 人格と表現ルール性格・話し方・色・写真の雰囲気をそろえる表現のルール
⑧ ストーリーお客さんが主人公の物語にして伝える共感される物語
⑨ 一貫性・意図・継続すべての接点で同じ印象を届け続ける育ち続けるブランド

表を見ると分かるように、前のステップで決まったことが、次のステップの材料になっています。だからこそ、順番どおりに進めることが一番の近道です。途中で迷ったら、ひとつ前のステップに戻って考え直してみてください。

ここからは、1つずつ順番に見ていきます。詳しく知りたいステップは、それぞれのリンク先の記事で、手順やワークまで解説しています。

工程1|調べる(いまの姿を知る)

最初の工程は、いきなり新しいことを決めるのではなく、いまの自社の姿を正しく知ることです。ここを飛ばすと、あとで決めたことが現実とずれてしまいます。

ステップ1:目的と範囲を決める

まず、「何のためにブランディングをするのか」を決めます。採用に困っているのか、値下げ競争から抜け出したいのか、新しい事業を始めるのか。目的によって、やることも、かける時間もお金も変わります。

あわせて、会社全体のブランディングなのか、1つの商品やサービスのブランディングなのか、範囲も決めておきます。くわしくはブランディングの目的の決め方で解説しています。

ワーク 「ブランディングをして、1年後に何がどう変わっていたらうれしいか」を、1文で書いてみましょう。

ステップ2:想い・背景を書き出す

次に、会社を始めたきっかけや、大切にしてきたこと、これまで守ってきたやり方を書き出します。ブランドの「芯」は、たいていこの中にあります。

経営者にとっては当たり前のことほど、ほかの会社にはない強みであることが少なくありません。(詳しい記事は近日公開)

ワーク 創業したときの気持ちと、ずっと変えずに続けていることを、3つずつ書き出しましょう。

ステップ3:お客さん・市場・競合を調べる

自社のことだけを見ていても、選ばれる理由は見えてきません。お客さんは何に困っているのか、市場はどう変わっているのか、ライバルは何を言っているのかを調べます。

とくに、いまのお客さんに「なぜうちを選んでくれたのか」を聞くことは、もっとも手軽で、もっとも効果のある調べ方です。(詳しい記事は近日公開)

ワーク いまのお客さん3人に「ほかにも会社がある中で、なぜうちを選んでくれたのですか?」と聞いてみましょう。

工程2|決める(方向性を定める)

調べた材料をもとに、ブランドの方向性を決めていきます。9ステップの中で、もっとも大事な工程です。

ステップ4:誰に選ばれたいかを決める

「すべての人」ではなく、いちばん喜んでくれるお客さんを決めます。対象を絞るのはこわく感じるかもしれませんが、絞った会社ほど、言葉がまっすぐ届くようになります。(詳しい記事は近日公開)

ワーク これまでで一番喜んでくれたお客さんを1人思い浮かべ、その人の仕事・年齢・困っていたことを書き出しましょう。

ステップ5:選ばれるポジションを決める

お客さんの頭の中で、自社が「何の会社」として覚えられたいかを決めます。ほかの会社と同じ場所で戦わず、自社が1番になれる場所を選ぶのがポイントです。

考え方と決め方は、ポジショニングとは?中小企業が「この分野ならあの会社」になる考え方で詳しく解説しています。小さな市場で1番を目指す考え方はニッチトップ戦略の記事もあわせてどうぞ。

ワーク 「○○といえば、あの会社」の○○に入れたい言葉を、3つ書き出しましょう。

ステップ6:ありたい姿を言語化する

会社が目指す姿と、お客さんに約束することを、言葉にします。ブランドの「軸」になる言葉です。迷ったときに立ち返る場所になります。

会社の軸を一言にする方法はブランドコンセプトの作り方、会社が何のためにあるのかを言葉にする方法はパーパス経営とは?で紹介しています。お客さんが選ぶ理由を一言にするならUSPの作り方も参考になります。

ワーク 「私たちは、(誰)に、(どんな得)を約束する会社です」の形で、1文を書いてみましょう。

ステップ7:人格と表現ルールを決める

ブランドを1人の人にたとえたら、どんな性格で、どんな話し方をするでしょうか。人格が決まると、言葉づかい・色・写真の雰囲気など、表現のルールも決めやすくなります。

ロゴや色を「好み」ではなく経営戦略から決める考え方は、ブランディングデザインとは?で解説しています。(表現ルールのまとめ方の記事は近日公開)

ワーク 自社を人にたとえたときの性格を、形容詞で3つ書き出しましょう(例:誠実、明るい、几帳面)。

工程3|育てる(届け続ける)

決めたことは、届けて初めてお客さんの頭の中に残ります。最後の工程は、ブランドを伝え、育て続けることです。

ステップ8:ブランドのストーリーを伝える

人は、情報よりも物語のほうを覚えています。会社が生まれたきっかけ、こだわり、お客さんへの約束を、お客さんが主人公になる物語にして伝えます。

物語の型と書き方は、ブランドストーリーの作り方で紹介しています。

ワーク 「お客さんのどんな困りごとを見て、何を始めたのか」を、3行で書いてみましょう。

ステップ9:一貫性・意図・継続で育てる

ブランドは、一度つくって終わりではありません。ホームページ、名刺、接客、SNS、請求書の封筒まで、どこを切り取っても同じ印象が伝わるように育てていきます。

ブランドを育てる3つの鍵。一貫性(どこでも同じ)、意図(狙ってそろえる)、継続(続けて届ける)が重なるところにブランド体験がある

社員一人ひとりが同じ言葉で会社を語れるようにすることも、大切な育て方の1つです。くわしくはインナーブランディングとは?をご覧ください。会社全体のブランドを整える考え方は企業ブランディングとは?で解説しています。

ワーク お客さんが自社と出会う場面(ホームページ、電話、名刺、店頭など)を書き出し、言葉や見た目がばらばらになっている場所に印をつけましょう。

順番を飛ばすと、ブランディングはうまくいかない

よくあるのが、工程1と工程2を飛ばして、いきなりロゴやホームページを作り直してしまうケースです。見た目は新しくなっても、「誰に、何を約束する会社なのか」が決まっていないため、結局お客さんには違いが伝わりません。

見た目から始める会社は言うことがばらばらで選ばれない。9ステップで進める会社は言葉と見た目がそろい、「○○ならあの会社」と覚えられる

見た目は、決めたことを伝えるための最後の仕上げです。経営の方向性と表現をセットで考えることで、かけたお金と時間が、選ばれる理由として積み上がっていきます。全体の戦略の立て方はブランド戦略の立て方、すでにあるブランドを見直すときはリブランディングとは?も参考にしてください。

始める前に考えたい3つの問い

9ステップに入る前の準備運動として、次の3つの問いを考えてみてください。答えが出なくても大丈夫です。考えること自体が、ブランディングの第一歩になります。

まず、自社で考えたい3つの問い

  • 誰に選ばれたいか:すべての人ではなく、いちばん喜んでくれるお客さんを1人思い浮かべる
  • なぜ、いま選ばれているか:いまのお客さんに理由を聞くと、自社では気づかなかった強みが見つかる
  • どんな言葉で覚えられたいか:「○○といえば、あの会社」の○○に入る言葉を、社内で話し合う
栢原陽子
栢原陽子

3つの問いは、経営者ひとりで考えるより、社員さんや長く付き合いのあるお客さんと話すほうが、ずっと良い答えが出てきます。ぜひ誰かと一緒に考えてみてくださいね。

よくある質問

Q. 小さな会社でも、ブランディングは必要ですか?

はい。むしろ、広告に大きなお金をかけられない小さな会社ほど必要です。「○○といえば、あの会社」と覚えてもらえれば、紹介や口コミで選ばれるようになり、値下げで競う必要が少なくなります。

Q. 9ステップを全部終えるには、どのくらいかかりますか?

会社の規模や目的によって違いますが、工程1と工程2は、集中して取り組めば数週間から数か月で形になります。工程3の「育てる」には終わりがなく、ずっと続けていくものです。

Q. 途中のステップから始めてもいいですか?

すでにロゴやホームページがある会社は、ステップ9の「ばらばらな場所に印をつける」から始めても構いません。ただ、ばらばらになっている原因は、たいていステップ4〜6が決まっていないことにあります。気になったら、前のステップに戻ってみてください。

まとめ:ブランディングは「順番」で決まる

この記事のまとめ

  • ブランドは、会社の中ではなく、お客さんの頭の中に生まれる
  • お客さんは、機能だけでなく、共感や安心といった感情の価値でも選んでいる
  • ブランディングは「調べる → 決める → 育てる」の3工程・9ステップで進める
  • 見た目は最後の仕上げ。先に「誰に、何を約束するか」を決める
  • 育てる工程には終わりがない。一貫性・意図・継続で届け続ける

ブランディングは、特別な会社だけのものではありません。順番どおりに一歩ずつ進めれば、小さな会社でも、お客さんに選ばれ続ける理由をつくることができます。

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UNIBRANDでは、言葉もデザインも経営戦略のひとつと考えています。経営者のお話をうかがい、9つのステップに沿って、戦略から考えて、言葉やデザインの形にするところまでお手伝いしています。

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