ブランディングデザインとは?ロゴ・色・言葉を経営戦略から決める方法

栢原陽子
栢原陽子

この記事は、ロゴや色を「なんとなく好き」で選んでしまいがちな社長に読んでほしいと思って書きました。

会社のロゴや色を決めるとき、「なんとなく、この色が好きだから」で選んだことはないでしょうか。

ロゴを新しくしたのに、お客さんの反応は変わらない。ホームページはきれいになったのに、問い合わせが増えない。こうしたお悩みの多くは、デザインの腕前ではなく、デザインを決める順番に原因があります。

ロゴも色も言葉も、会社の印象を作る大切な道具です。だからこそ、社長の好みではなく、経営戦略から決める必要があります。この記事では、その考え方と、デザイナーに頼む前に社長が自分で進められる手順をまとめました。

この記事でわかること

  • ブランディングデザインの意味と、ふつうのデザインとの違い
  • ロゴや色を「好み」で決めてはいけない理由
  • ロゴ・色・言葉を経営戦略から決める5ステップ(ワーク付き)
  • よくある失敗と、デザイナーに頼む前の準備

ブランディングデザインとは「経営戦略を、目に見える形にすること」

ブランディングデザインとは、会社がお客さんに持ってほしい印象を、ロゴ・色・書体・写真・言葉づかいといった形にそろえていくことです。一つひとつのデザインをきれいにするのではなく、会社全体の「顔つき」を一つにそろえる仕事だと考えてください。

そして、その「持ってほしい印象」を決めるのが経営戦略です。どんなお客さんに、何を約束して選ばれたいのか。それが決まってはじめて、どんな形がふさわしいかが決まります。経営戦略とブランドのつなげ方は、ブランド戦略の立て方の記事でくわしく紹介しています。

ふつうのデザインとの違い

ふつうのデザインは、「このチラシを見やすくする」「このページをおしゃれにする」のように、目の前の一つを良くすることが目的です。ブランディングデザインは、どのチラシを見ても、どのページを見ても、「あの会社だ」とわかるようにすることが目的です。

好みで決める場合(社長が好きな色、流行のロゴ、その場で決めた言葉)と、戦略で決める場合(約束に合う色、長く使える形、約束から選ぶ言葉)の比較

ブランディングデザインに含まれるもの

  • ロゴ:会社を思い出してもらうための目印
  • 色:遠くからでも、ひと目で会社を思い出せる手がかり
  • 書体:文字の形。やわらかさや、きちんと感を伝える
  • 写真やイラストの雰囲気:明るさ、人の写し方、余白の取り方
  • 言葉づかい:キャッチコピー、文章の語り口、呼びかけ方

見落とされやすいのが、最後の「言葉づかい」です。同じロゴでも、ホームページはていねいな言葉、SNSはくだけた言葉、と担当者ごとにバラバラだと、お客さんは一つの会社として受け取れません。言葉も、デザインの一部です。

なぜ「好み」で決めてはいけないのか

1. 社長の好きと、お客さんの好きは違うから

ロゴや色を見るのは、社長よりもお客さんのほうが圧倒的に多いものです。社長が落ち着いた色を好きでも、お客さんが「話しかけやすい会社」を求めているなら、ふさわしい色は変わります。基準は、社長の好みではなく、お客さんにどう感じてほしいかです。

2. 流行は、すぐに古くなるから

流行のデザインは、その時は新しく見えます。でも、数年たつと、かえって古さを感じさせることがあります。ロゴは長く使うほど資産になるものです。流行ではなく、会社の約束に合っているかで決めたほうが、長く使えます。

3. 決めた理由を説明できないと、社員が使えないから

「社長が好きだから」という理由は、社員には引きつげません。新しいチラシを作るとき、社員は「この色でいいのか」を判断できず、結局バラバラになっていきます。「うちは〇〇という約束をしているから、この色」と説明できれば、誰が作っても同じ方向にそろいます。

ポイント

  • デザインの基準は「お客さんにどう感じてほしいか」
  • 流行より、会社の約束に合っているか
  • 決めた理由を、社員に説明できるか

同じ形を「くり返し見せる」ことが、好きにつながる

心理学には「単純接触効果(たんじゅんせっしょくこうか)」という考え方があります。同じものを何度も見るうちに、それに好意を持ちやすくなる、という効果です。アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスが、1968年の論文で発表しました。

この考え方をブランディングデザインに当てはめると、大切なのは「一度すごいデザインを見せること」よりも、「同じ形を、くり返し見せること」だとわかります。ロゴや色が毎回ちがうと、お客さんは同じ会社だと気づけず、見た回数が積み重なりません。

だからこそ、デザインは一度決めたら、名刺にも、ホームページにも、車や看板にも、同じ形で使い続けることが大切です。その「使い続けられる形」を選ぶために、経営戦略から決める必要があるのです。

ロゴ・色・言葉を経営戦略から決める5ステップ

ここからは、紙とペンを用意して進めてみてください。デザイナーに頼む場合でも、この5ステップの答えを先に用意しておくと、話がぐっと早くなります。

ロゴ・色・言葉を戦略から決める5ステップ。経営戦略を3つの言葉にする、印象の言葉を決める、言葉づかいを決める、色と書体を選ぶ、ロゴとルールにまとめる
栢原陽子
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デザインを考えるとき、いきなり色やロゴの見本を探したくなりますよね。でも、見た目はいちばん最後で大丈夫です。先に言葉で決めておくと、迷う時間がぐっと減りますよ。

ステップ1:経営戦略を3つの言葉にする

最初に、デザインのもとになる経営戦略を、3つの問いに答える形で書き出します。

  • 誰に選ばれたいか(いちばん来てほしいお客さん)
  • 何を約束するか(お客さんにとっての得)
  • どんな会社でありたいか(3年後の姿)

2つ目の「約束」は、USPとは?の記事で紹介している作り方がそのまま使えます。ここがデザインのすべての土台になります。

ワーク 「誰に」「何を約束するか」「どんな会社でありたいか」を、それぞれ一文で書き出しましょう。

ステップ2:「印象の言葉」を決める

次に、ステップ1の約束を信じてもらうために、お客さんにどう感じてほしいかを、2〜3個の言葉にします。「誠実」「親しみやすい」「すばやい」「上品」「頼もしい」などです。

このとき、反対の言葉も一緒に決めるのがコツです。たとえば「親しみやすい。でも、なれなれしくはない」。反対の言葉があると、デザインの「やりすぎ」を防げます。

印象の言葉は、ステップ1の約束から選びます。たとえば「急な相談にもすぐ応える」と約束するなら、「すばやい」「頼もしい」が候補になります。約束と関係のない「おしゃれ」「高級感」を選んでしまうと、デザインと約束がずれていきます。迷ったら、「この印象は、約束を信じてもらう助けになるか」と自分に聞いてみてください。

ワーク お客さんに感じてほしい印象の言葉を3つ選び、それぞれに「でも、〇〇ではない」という反対の言葉を書き足しましょう。

ステップ3:言葉づかいを決める

色やロゴより先に、言葉づかいを決めます。言葉は、印象の言葉をいちばんそのまま形にしやすいからです。決めるのは、次の3つです。

  • 会社の一言(約束を短くした、キャッチコピーのもと)
  • 語り口(です・ます調か、どのくらいくだけるか)
  • 使う言葉・使わない言葉(専門用語の扱い、呼びかけ方)

ワーク 約束を20文字以内の一言にまとめ、「使う言葉」と「使わない言葉」を3つずつ書き出しましょう。

ステップ4:色と書体を選ぶ

ここで、はじめて見た目を決めます。基準は、ステップ2の印象の言葉です。候補の色や書体を並べて、「この色は、印象の言葉に合っているか」を一つずつ確かめます。

色の数は、メインの色1つと、それを助ける色1〜2つに絞るのがおすすめです。色が多いほど、会社の顔つきはぼやけます。また、色の感じ方は人によって違うので、「この色はこういう意味」と決めつけず、お客さんに近い人に見せて感想を聞いてみてください。

印象から形を選ぶ例(いずれも架空の例です)

  • 会計事務所:「誠実・でも冷たくない」→ 落ち着いた青に、温かみのある差し色。読みやすい書体
  • カフェ:「くつろげる・でも雑ではない」→ 生成りや木の色を中心に。手書き風は見出しだけ
  • 設備工事会社:「すばやい・でも雑ではない」→ 遠くからでも目立つはっきりした色。太めの書体

ワーク メインの色の候補を3つ並べ、ステップ2の印象の言葉に一番合うものを1つ選び、その理由を一文で書きましょう。

ステップ5:ロゴと「使い方ルール」にまとめる

最後に、ステップ1〜4をもとにロゴを作り、使い方のルールを1枚にまとめます。ロゴは、ここまで決めた約束と印象を「ひと目で思い出してもらうための目印」です。ロゴだけで会社のすべてを語ろうとしなくて大丈夫です。

使い方ルールには、ロゴの置き方、色の番号、書体の名前、言葉づかいのきまりを書きます。これがあれば、社員や外部の制作会社が作るものも、同じ顔つきにそろいます。

ルールができたら、デザインを使う場所を書き出しておきましょう。名刺、封筒、見積書、ホームページ、SNS、看板、制服、車など、思っている以上にたくさんあります。一度にすべてを変える必要はありません。お客さんが最初に目にする場所から、順番にそろえていけば大丈夫です。

ワーク ステップ1〜4の答えを「約束・印象・言葉・色と書体」の4つの見出しで、A4の紙1枚に書き写しましょう。

戦略(何を約束するか)から印象(どう感じてほしいか)、形(ロゴ・色・書体・言葉づかい)へと流れる3列の図

ブランディングデザインで、よくある3つの失敗

1. ロゴを作れば、ブランドができると思ってしまう

ロゴは目印であって、ブランドそのものではありません。約束が決まっていないままロゴだけ新しくしても、お客さんの中の印象は変わりません。

こう直す:ロゴを作る前に、ステップ1〜2の「約束」と「印象の言葉」を決めて、デザイナーに渡します。

2. 媒体ごとに、色や言葉が変わってしまう

名刺は青、ホームページは緑、SNSはその時の気分。これでは、くり返し見てもらっても、同じ会社だと気づいてもらえません。

こう直す:使い方ルールを1枚にまとめ、新しく何かを作るときは必ずそれを見てから作る、と社内で決めます。

3. 見た目だけ変えて、中身が変わっていない

デザインが「誠実」でも、問い合わせの返事が遅ければ、お客さんは誠実だとは感じません。デザインが約束したことと、実際の対応がずれると、かえって信頼を失います。

こう直す:デザインを新しくするのと同時に、接客や対応の中で約束を守るための工夫を一つ決めます。

デザイナーに頼む前のチェックリスト

  • いちばん選ばれたいお客さんが決まっているか
  • お客さんへの約束を、一言で言えるか
  • 感じてほしい印象の言葉と、その反対の言葉があるか
  • 使う言葉・使わない言葉が決まっているか
  • 決めたデザインを、どこで使うかを書き出したか

よくある質問

Q. 今のロゴは、作り直したほうがいいですか?

すぐに作り直す必要はありません。まずはステップ1〜2を行い、今のロゴが約束や印象の言葉に合っているかを確かめてください。合っていれば、色や言葉づかいをそろえるだけで十分なこともあります。変えるもの・変えないものの決め方は、リブランディングとは?の記事も参考になります。

Q. デザインの知識がなくても進められますか?

はい。ステップ1〜3は、デザインの知識がなくても、会社のことを一番知っている社長だからこそ書けるものです。ステップ4〜5は、デザイナーと一緒に進めると安心です。頼むときは、この記事のチェックリストを埋めた紙を一緒に渡すと、思いどおりの形に近づきやすくなります。

Q. 色の意味は、どうやって調べればいいですか?

色の感じ方は、人や地域、業界によって違います。本やインターネットの「色の意味」は参考程度にして、最後はお客さんに近い人に見せ、「どんな会社に見えますか?」と聞いて確かめるのがいちばん確実です。

まとめ:デザインは、いちばん最後に決める

この記事のまとめ

  • ブランディングデザインとは、経営戦略を目に見える形にそろえること
  • ロゴ・色・言葉は、社長の好みではなく「お客さんにどう感じてほしいか」で決める
  • 同じ形をくり返し見せることで、印象が積み重なる
  • 決める順番は「戦略」→「印象」→「言葉」→「色と書体」→「ロゴとルール」
栢原陽子
栢原陽子

デザインは、会社の想いをお客さんに届けるための道具です。「なぜこの色なのか」を自分の言葉で説明できたら、それはもう立派なブランディングデザインの第一歩ですよ。

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