企業ブランディングとは?中小企業がまず整える3つのこと

栢原陽子
栢原陽子

この記事は、商品ではなく、会社そのものを「あの会社なら」と思ってもらいたい社長に読んでほしいと思って書きました。

「ブランディング」と聞くと、何を思い浮かべるでしょうか。

おしゃれなロゴ、統一された色、かっこいいホームページ。そう考える社長は少なくありません。そして「うちのような小さな会社には、まだ早い」「お金に余裕ができたらやろう」と、後回しにしてしまいます。

でも、企業ブランディングは見た目の話ではありません。お客さんや社員、取引先が「この会社は、こういう会社だ」と思い浮かべる、その中身を整えることです。そしてそれは、売上や採用、紹介の数にそのままつながる、経営戦略のひとつです。

この記事では、企業ブランディングの意味から、中小企業がまず整えたい3つのこと、紙とペンで進められる5つのステップまでをまとめました。

この記事でわかること

  • 企業ブランディング(コーポレートブランディング)の意味と、商品ブランディングとの違い
  • ブランドイメージが「お客さんの頭の中」にある理由
  • 中小企業がまず整える「約束・言葉・体験」の3つ
  • 企業ブランディングの進め方5ステップと、よくある失敗

企業ブランディングとは「会社そのものを、選ばれる理由にすること」

企業ブランディングとは、商品ひとつひとつではなく、会社そのものを「選ばれる理由」にしていく取り組みです。英語では「コーポレートブランディング」と呼ばれます。どちらも同じ意味だと考えてかまいません。

たとえば、同じような商品やサービスが並んでいても、「あの会社に頼めば安心」「あの会社の考え方が好き」と思ってもらえれば、お客さんは迷わずその会社を選びます。この「あの会社なら」という気持ちをつくるのが、企業ブランディングです。

商品ブランディングとの違い

ブランディングには、大きく分けて「商品ブランディング」と「企業ブランディング」があります。違いは、主役が商品なのか、会社なのかです。

商品ブランディング企業ブランディング
主役1つの商品・サービス会社そのもの
届ける相手その商品を買う人お客さん・社員・取引先・地域
かかわる範囲商品名・パッケージ・広告など名刺・ホームページ・接客・電話の出方まで全部
商品ブランディングは1つの商品が主役で買う人に向けたもの、企業ブランディングは会社そのものが主役で、お客さん・社員・取引先に向けたものであることを比べた図

大きな会社は、商品ごとにブランドを育てる余裕があります。でも中小企業は、商品の数も広告費も限られています。だからこそ、中小企業 ブランディングは、まず会社の顔から整えるのが近道です。会社の顔がはっきりすれば、そこから生まれる商品やサービスにも、自然と信頼がつきます。

ブランドイメージは「お客さんの頭の中」にある

よく使われる「ブランドイメージ」という言葉も、確認しておきましょう。アメリカのマーケティング学者ケビン・レーン・ケラーは、1993年の論文で、ブランドイメージを「お客さんの記憶の中で、そのブランドと結びついているイメージの集まり」として整理しました。

つまり、ブランドイメージは会社が決めるものではなく、お客さんの頭の中にできあがるものです。「丁寧」「早い」「ちょっと高い」「相談しやすい」。こうした言葉が、ホームページを見たとき、電話をかけたとき、担当者に会ったときに少しずつ積み重なって、会社のイメージになります。

ポイント

企業ブランディングとは、お客さんの頭の中にできるイメージを、会社が「こう思ってほしい」という姿に近づけていくことです。ロゴや色は、そのための道具のひとつにすぎません。

中小企業にとって、企業ブランディングが経営戦略である理由

「ブランディングは大企業のもの」と思われがちですが、実は中小企業ほど効き目があります。社長の考えが会社のすみずみまで届きやすく、決めたことをすぐに形にできるからです。具体的には、次のような変化が起こります。

1. 値段だけで比べられにくくなる

会社の顔が見えないと、お客さんは「どこに頼んでも同じ」と感じます。同じに見えれば、比べられるのは値段だけです。「この会社だから頼みたい」という理由があれば、多少高くても選ばれるようになります。

2. 採用で「この会社で働きたい」と思ってもらえる

求人を見る人は、給料や休みだけでなく「どんな会社か」を見ています。会社の考え方や大切にしていることが伝われば、それに共感する人が集まりやすくなります。

3. 紹介や取引先からの信頼が増える

紹介は、紹介する人が「あの会社は〇〇だから」と説明できて、はじめて起こります。会社の顔がはっきりしていれば、紹介する人も話しやすくなります。

4. 社員の判断がそろう

「うちの会社は何を大切にしているか」がはっきりしていると、社員は迷ったときにそこへ立ち返れます。社長がいないところでも、会社らしい対応ができるようになります。社内に向けたブランディングについては、インナーブランディングとは?の記事でくわしく紹介しています。

栢原陽子
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ブランディングは、余裕ができてからやるものではありません。人もお金も限られている今だからこそ、「何を大切にする会社か」を決めておくと、毎日の判断がぐっとラクになりますよ。

中小企業がまず整える3つのこと

企業ブランディングというと、やることがたくさんあるように感じるかもしれません。でも、中小企業がまず整えたいのは、次の3つだけです。

約束(誰に何を約束するか)、言葉(会社の説明をそろえる)、体験(見た目と対応)の3つの円が重なり、中央が「選ばれる会社」になっている図

1. 約束:誰に、何を約束する会社か

一番はじめに決めるのが「約束」です。どんなお客さんに、どんな得を約束する会社なのか。これが会社の軸になります。

ここで大切なのは、「自社がすごいこと」ではなく「お客さんにとって何が得か」で考えることです。考え方は、USPとは?の記事で紹介している「選ばれる理由」の作り方と同じです。

2. 言葉:会社の説明を、誰が話しても同じにする

約束が決まったら、それを言葉にします。会社のことを一言で言うと何か、30秒で説明するなら何を話すか。社長、社員、ホームページ、名刺で、説明がバラバラになっていないかを確かめます。

説明がそろっていると、お客さんの頭の中に同じイメージがくり返し届き、印象が強く残ります。反対に、話す人によって説明が違うと、お客さんは「結局どんな会社なんだろう」と迷ってしまいます。

3. 体験:見た目と対応を、約束に合わせる

最後が「体験」です。ロゴや色、ホームページのデザインといった見た目に加えて、電話の出方、メールの返し方、見積もりの出し方、事務所の雰囲気まで、お客さんが会社にふれるすべての場面がここに入ります。

たとえば「相談しやすい会社」と約束しているのに、電話がいつも留守番電話だったら、イメージは崩れてしまいます。見た目と対応を約束に合わせてはじめて、お客さんは「本当にそういう会社なんだ」と信じてくれます。

3つを整えた例(いずれも架空の例です)

  • 設備工事の会社:約束「故障の連絡から2時間以内にうかがう」→ 言葉「地域で一番かけつけが早い設備屋」→ 体験:電話は必ず人が出る・車に連絡先を大きく表示
  • 会計事務所:約束「数字が苦手な社長にも、図で説明する」→ 言葉「数字を絵にする会計事務所」→ 体験:毎月の報告を1枚の図で渡す
  • 洋菓子店:約束「記念日のケーキを、思い出に残る形で」→ 言葉「記念日専門のケーキ屋」→ 体験:予約時に名前の由来やエピソードを聞く

どの例も、約束・言葉・体験が一本の線でつながっています。この3つがそろうと、お客さんの頭の中に「あの会社といえば、これ」というブランドイメージが育っていきます。

企業ブランディングの進め方5ステップ

ここからは、実際に紙とペンを用意して進めてみてください。大切なのは、見た目を整えるのは4番目ということです。先に戦略を決めるから、見た目や言葉がぶれなくなります。

今のイメージを知る、なりたい姿を決める、約束を一言にする、言葉と見た目をそろえる、行動で確かめる、の5つのステップを順番に並べた図

ステップ1:今のイメージを知る

まずは、今の会社がどう見られているかを知ります。社長が思っている会社の姿と、お客さんが感じている会社の姿は、意外とずれているものです。

  • 「うちの会社を一言で言うと、どんな会社ですか?」
  • 「ほかの会社ではなく、うちに頼んだのはなぜですか?」
  • 「うちの会社に、もっとこうしてほしいことはありますか?」

この3つを、お客さん・社員・取引先に聞いてみてください。返ってきた言葉が、今のブランドイメージです。

ワーク お客さん・社員・取引先から1人ずつ選んで上の3つの質問をし、返ってきた言葉を言い換えずにそのまま書き写しましょう。

ステップ2:なりたい姿を決める

次に、3年後にお客さんからどう言われる会社になっていたいかを考えます。ここは、会社の経営計画と必ずつなげてください。「これから伸ばしたい事業」「来てほしいお客さん」「増やしたい社員」から考えると、なりたい姿がはっきりします。

ステップ1で集めた「今の姿」と、ここで決めた「なりたい姿」の差が、これから埋めていくところです。

ワーク 「3年後、お客さんから『〇〇な会社』と言われたい」の〇〇に入る言葉を3つ書き出し、今の姿との違いに線を引きましょう。

ステップ3:約束を一言にする

なりたい姿から、お客さんへの約束を一言にまとめます。「(誰)に、(どんな得)を約束する会社」の形に当てはめてみてください。

最初は長くてかまいません。何度か読み返して、なくても意味が通じる言葉を削っていきます。この一言が、会社の軸になる「ブランドコンセプト」です。作り方はブランドコンセプトの作り方の記事でくわしく紹介しています。

ワーク 「(誰)に、(どんな得)を約束する会社」の形で、候補を3つ書き、声に出して読んで一番しっくりくるものに丸をつけましょう。

ステップ4:言葉と見た目をそろえる

約束が決まってはじめて、言葉と見た目を整えます。お客さんが会社にふれる場所を書き出して、約束と合っていないところから直していきます。

  • ホームページの一番上の言葉
  • 名刺・会社案内・営業資料
  • ロゴ・色・写真の雰囲気
  • SNSのプロフィールと投稿の言葉づかい
  • 求人票の会社紹介

ワーク 上の5つの場所を見直し、約束と合っていないところに印をつけて、直す順番を1〜5の番号で書きましょう。

ステップ5:行動で確かめる

最後に、約束を毎日の行動に落としこみます。電話の出方、見積もりの出し方、お客さんへの連絡のタイミング。約束を守るために、社内で何をそろえるかを決めます。

半年ほどたったら、ステップ1と同じ質問を、もう一度お客さんにしてみてください。返ってくる言葉が「なりたい姿」に近づいていれば、企業ブランディングがうまく進んでいる証拠です。

ワーク 約束を守るために社内でそろえる行動を3つ決め、半年後にお客さんへ同じ質問をする日をカレンダーに書きこみましょう。

栢原陽子
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5つのステップは、一度で完璧にしなくて大丈夫です。お客さんの言葉を集めるところから始めると、会社の「らしさ」が自然と見えてきますよ。

企業ブランディングで、よくある3つの失敗

1. ロゴやホームページから作り始めてしまう

一番多いのが、見た目から手をつけてしまう失敗です。約束が決まっていないまま作ったロゴやホームページは、きれいでも「どんな会社か」が伝わりません。数年後に、また作り直すことになりがちです。

こう直す:デザインを頼む前に、ステップ1〜3を終わらせます。「誰に、何を約束する会社か」を一言で伝えられれば、デザインを頼むときの説明も短くすみます。

2. 社長だけが知っている状態になる

社長が一人で考えて決めたものの、社員には伝わっていない。これもよくある失敗です。お客さんと直接話すのは社員のことが多いので、社員が知らなければ、約束はお客さんに届きません。

こう直す:決めた約束と言葉を、朝礼や会議でくり返し話します。ステップ1の質問に社員も参加してもらうと、「自分たちで決めた」という気持ちが生まれます。

3. きれいな言葉で、何も言っていない

「お客様第一」「信頼と実績」「地域に貢献」。大切な言葉ですが、どの会社も言っているので、お客さんの頭には残りません。

こう直す:「お客様第一」なら、何をすることがお客様第一なのかを書きます。「ご連絡はその日のうちに必ず返します」のように、お客さんが目に浮かべられる言葉に言い換えます。

企業ブランディングのセルフチェック

  • 「誰に、何を約束する会社か」を一言で言える
  • 社長と社員で、会社の説明が同じになっている
  • ホームページ・名刺・会社案内の言葉がそろっている
  • ロゴや色が、約束のイメージに合っている
  • 電話やメールの対応が、約束を守れている
  • 半年に一度、お客さんにイメージを聞いている

よくある質問

Q. 企業ブランディングには、どのくらい費用がかかる?

ステップ1〜3は、社長と社員の時間があればお金をかけずにできます。費用がかかるのは、ステップ4でロゴやホームページを作り直すときです。先に約束を決めておけば、作り直す範囲をしぼれるので、むだな出費をおさえられます。

Q. 効果が出るまで、どのくらいかかる?

ブランドイメージは、お客さんとふれあう回数が重なってできていくものなので、すぐには変わりません。ただ、言葉がそろうと、紹介のされ方や問い合わせの中身が少しずつ変わってきます。半年ごとにお客さんの声を聞いて、変化を確かめるのがおすすめです。

Q. 商品が1つしかない会社でも、企業ブランディングは必要?

はい。商品が少ない会社ほど、「誰が作っているか」「どんな考えの会社か」が選ばれる理由になります。商品と会社の顔を、同じ約束でつないでおくと、新しい商品を出すときにも信頼を引きついでもらえます。

まとめ:企業ブランディングは、会社の顔をつくる経営戦略

この記事のまとめ

  • 企業ブランディング(コーポレートブランディング)とは、会社そのものを選ばれる理由にすること
  • ブランドイメージは、お客さんの頭の中にできあがるもの
  • 中小企業がまず整えるのは「約束・言葉・体験」の3つ
  • 進め方は「今を知る」→「なりたい姿」→「約束を一言に」→「言葉と見た目」→「行動で確かめる」
  • 見た目を整えるのは、戦略を決めたあと

企業ブランディングは、ロゴを新しくすることではありません。会社が誰に何を約束するのかを決めて、言葉と見た目と行動をそろえていく、経営そのものの取り組みです。

企業ブランディングを、経営戦略から一緒に考えませんか

UNIBRANDでは、言葉もデザインも、経営戦略のひとつと考えています。社長のお話をうかがいながら、戦略から考えて、言葉やデザインの形にするところまでを、ひとつながりでお手伝いしています。見た目や言葉がきれいなだけで終わらず、売ることにつながる形で、会社の想いが届くようにすることを大切にしています。

「会社の顔をはっきりさせたい」「ロゴやホームページを作り直す前に、何から考えればいいか知りたい」。そんなときは、お気軽にご相談ください。