アウトプットする前提で考えると、頭の中が整理される

栢原陽子
栢原陽子

この記事は、「自分の会社の強みや、本当にやりたいことを、うまく言葉にできない」と感じている経営者の方に読んでほしいと思って書きました。

アウトプットすることを前提に考えると、頭の中が整理されていく。いま、私が感じていることです。

自分の事業とあらためて向き合い、考えていることを言葉にしたり、流れを図にしたり、伝えたいことを整理したり。頭の外に出していくなかで、気づけることがたくさんありました。

そして、自分に何ができるのか、本当は何がしたかったのかが、見えてきました。

これは手順の記事ではなく、私が気づいたことと、AIが身近になったいま、したいと思っていることを書いた想いのコラムです。

この記事で書くこと

  • 言葉にする・図にする・整理するなかで、自分の事業が見えてきたこと
  • AIで、Webサイトが誰でも作れるようになったときに考えたこと
  • 同じAIを使っても、結果に差が出るのはなぜか
  • 私がたどり着いた「ブランディングを、仕組みで支える」という考え

頭の中で考えているだけでは、見えないことがある

自分の事業のことは、自分がいちばんよく分かっている。そう思っている経営者の方は、多いのではないでしょうか。

私自身、自分の事業を言葉にするときは、しっくりくるまで何回も何回も、20回以上くり返しています。

頭の中にあるうちは、分かったつもりでいられます。外に出してはじめて、つながっていないところや、言葉が足りないところが見えてきます。研究でも知られていることです。

人は、身の回りの道具や仕組みについて、実際よりもずっと深く理解していると感じている。アメリカの大学院生などを対象にした実験では、仕組みを順を追って説明してもらうと、多くの人が「思っていたほど分かっていなかった」と気づきました。研究者はこれを「説明の深さの錯覚」と呼んでいます。(※対象は学生などで、道具や仕組みの説明についての実験です)

Rozenblit, L. & Keil, F.(2002)”The misunderstood limits of folk science: an illusion of explanatory depth” Cognitive Science, 26, 521–562

自分の事業も、きっと同じです。うまく書けないところや、図にできないところは、ダメなところではありません。そこが、整理を始める場所なのだと思います。

栢原陽子
栢原陽子

うまく書けなくても大丈夫です。手が止まったところに、まだ言葉になっていない大事なことが隠れています。

言葉にする・図にする・整理する。3つで見えてきたこと

私がしたのは、次の3つです。

  • 考えていることを、言葉にする
  • 物事の流れを、図にする
  • 伝えたいことを整理して、並べ直す(構造化する)
言葉にする、図にする、整理するの3つの流れ。言葉にするは頭の中の考えを文字にすること、図にするは流れを目で見える形にすること、整理するは伝えたいことを並べ直すこと。3つをくり返すと、PMVV、自分にできること、本当にしたかったことが見えてくる

この3つをくり返すなかで、PMVV(パーパス・ミッション・ビジョン・バリュー)がはっきりしてきました。PMVVは、会社が何のためにあり、何を目指し、何を大切にするのかを表す言葉です。

同時に、自分に何ができるのか、何がしたかったのかも見えてきました。その中身は、この記事の最後に書きます。

ただ、書けば必ず答えが出る、という魔法ではないとも思っています。言葉にして、図にして、並べ替えて、眺め直す。その行き来のなかで見えてくるものなのだと思います。

AIで、Webサイトは誰でも作れるようになった

AIが発展して、私の仕事は「誰でもできる仕事」になりました。

そう感じたのは、Webサイトです。いまは、専門の知識がない人でも、簡単にWebサイトを作れるようになりました。

そのとき私は、「これからどうしようかな」と思いました。そして、「違う価値を見つけなきゃ」と思いました。

作ることの差が縮まっているのは、私だけの感覚ではないようです。研究でも、AIを使うと経験の浅い人ほど成果が伸びることが分かってきています。

アメリカのソフトウェア会社で、顧客対応をする担当者5,172人を調べた研究です。AIの手助けを使えるようになると、1時間あたりに解決できた問い合わせの件数が、平均で15%増えました。とくに伸びたのは、経験の浅い人でした。(※1つの会社・1つの仕事での結果です)

Brynjolfsson, E., Li, D., & Raymond, L.(2025)”Generative AI at Work” Quarterly Journal of Economics, 140(2), 889–942

世界的なコンサルティング会社の社員758人の実験では、AIが得意な課題でAIを使うと、こなせた課題が平均12.2%多くなり、25.1%速く終わりました。もともとの成績が下半分だった人ほど、大きく伸びています。

Dell’Acqua, F. ほか(2026)”Navigating the Jagged Technological Frontier” Organization Science
AIで差は縮まっている。顧客対応ではAIを使うと1時間あたりの解決件数が平均15%増えた。AIが得意な課題では、こなせた課題が12.2%多く、25.1%速く終わった。伸びたのは経験の浅い人、成績が下半分の人ほど

「誰でもできる」は、気のせいではありません。私が「違う価値を見つけなきゃ」と思ったのは、この流れのなかでした。

栢原陽子
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AIで作れるようになったからこそ、作る前に「何のために作るのか」を1行で書いてみてください。それだけで、AIへの頼み方が変わります。

同じPLを見ても、気づけることは人によって違う

では、AIがあれば、誰がやっても同じ結果になるのでしょうか。私は、そうは思っていません。

たとえば、会社の数字です。同じPL(損益計算書)やBS(貸借対照表)を見ても、そこから何に気づけるかは、人それぞれです。何を読み取れるかは、その人のセンスや経験しだいです。

木の机の上に、損益計算書と貸借対照表の紙が2枚重ねて置かれ、手前に電卓、奥に茶色の革の書類ばさみがある

AIも同じだと思います。AIはたくさんのデータを持っていて、いろいろなことができます。だからこそ、結果は使い方しだいです。そして、AIをどう使えばいいのか、まだ分かっていない方も多いと私は感じています。

同じAIを渡されても結果が分かれることは、経営者を対象にした研究でも出ています。

ケニアの小規模事業の経営者640人に、5か月間、AIの経営アドバイスを使えるようにした実験があります。全体の平均では、業績への効果は見られませんでした。ところが、もともと好調だった経営者は業績が伸び、不調だった経営者はかえって下がりました。不調だった経営者ほど、より難しい課題をAIに相談していたことも分かっています。(※2024年に公開された版の内容です)

Otis, N. G., Clarke, R., Delecourt, S., Holtz, D., & Koning, R.(2024)”The Uneven Impact of Generative AI on Entrepreneurial Performance”(2026年に Management Science で公刊)

一方で、「アイデアを出す力なら、もうAIのほうが上だ」という研究もあります。

アメリカの151人とGPT-4(AI)に、アイデアを出す力を測るテストを3種類受けてもらうと、GPT-4のほうが独創的な答えを出したと報告されています。(※測ったのはテストでの発想の力で、実際の仕事の成果ではないと、研究者自身も注意しています)

Hubert, K. F., Awa, K. N., & Zabelina, D. L.(2024)”The current state of artificial intelligence generative language models is more creative than humans on divergent thinking tasks” Scientific Reports, 14, 3440

だから私は、センスを「案をたくさん出す力」だとは考えていません。案を出すことや下書き、形にすることは、AIに任せていいと思っています。

私が言うセンスは、AIに何を問うのか。得られた答えから何を選び、次に何を問い、何を頼むのか。そこに、その人のセンスがあらわれると思っています。そしてその力は、PLやBSを読む力と同じように、経験のなかで育っていくものだと思います。

AIに任せていいことと、自分で決めることの比較。AIに任せていいのは、案をたくさん出す、下書きを作る、形にすること。自分で決めるのは、何のために使うか、どの案を選ぶか、何を捨てるか
栢原陽子
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AIに頼む前に、「何のために使うのか」を1行だけ書いてみてください。出てきた答えを選ぶときの、ものさしになります。

何を問い、何を選び、次に何を頼むかを決めるには、先に自分の考えが整理できていることが大切です。最初の章の「言葉にする・図にする・整理する」は、ここにつながっています。

私がやりたかったのは「ブランディングを、仕組みで支える」こと

私は、ずっとブランディングにこだわってきました。

お話を聞いて、その会社のどこを切り取るのかを決める。それは、もちろん楽しい仕事です。

でも、自分が本当に自信を持って提供できるのは何かと考えたとき、浮かんだのは、システムや何かを「作ること」でした。言いかえると、「仕組みを作る」ことなのかな、と思いました。

ブランドは、お客さんとの約束です。どこを切り取るかを決めても、発信を続けたり、品質を保ったりできなければ、ブランドとしての約束は守れません。

だから、ブランディングを、仕組みで支える。私がやりたかったことは、これだと思いました。

UNIBRANDのホームページのトップには、「ブランドは、仕組みで育つ。」という言葉を置いています。自分の事業と向き合うなかで見えてきたことは、この言葉と同じところにありました。

ここで言う仕組みとは、たとえば、発信を続けるための段取りや、品質をそろえるための手順のことです。だれかががんばり続けなくても、同じように約束を守れる形です。

ただ、何を仕組みにするかは、先に「何を約束するのか」が言葉になっていないと決められません。

だから私は、二つのことをお手伝いしたいと思っています。ひとつは、経営者の方と一緒に、考えていることを言葉にし、図にし、整理すること。もうひとつは、そこで決めた約束を守り続けられるように、仕組みで支えることです。

栢原陽子
栢原陽子

きれいな文章でなくて大丈夫です。箇条書きでも、単語だけでもかまいません。まずは頭の外に出してみるところから始めてみてくださいね。

この記事のまとめ

  • 考えていることは、言葉にし、図にし、整理すると見えてくる
  • AIで「作ること」の差は縮まった。差がつくのは、何を問い、何を選び、次に何を頼むかを決めるところ
  • ブランドは、お客さんとの約束。約束を守り続けるために、ブランディングを仕組みで支える

PMVVを実際に作ってみたい方は、姉妹記事「PMVVの作り方」(近日公開)もあわせてご覧ください。

AIで小さな仕組みを作るお手伝いについては、AIで仕組みづくりのページにまとめています。