
この記事は、「うちの強みって何?」と聞かれて、すぐに答えられない社長に読んでほしいと思って書きました。
「うちの会社の強みは何ですか?」と聞かれて、すぐに一言で答えられるでしょうか。
「品質には自信があります」「丁寧な対応が強みです」。
多くの社長がこう答えます。でも、それはお客さんから見ると、どの会社も言っていることです。
お客さんが知りたいのは、「たくさんある会社の中で、なぜあなたの会社なのか」。
この問いへの答えが、USPです。
この記事では、USPの意味から、中小企業が自分で作れる5つのステップ、よくある失敗までをまとめました。
この記事でわかること
- USPの意味と、キャッチコピー・強みとの違い
- 中小企業こそUSPが必要な理由
- 紙とペンでできる、USPの作り方5ステップ
- USPづくりでよくある失敗と、できたあとの使い方
USPとは「お客さんがあなたを選ぶ、たった一つの理由」
USPは「Unique Selling Proposition(ユニーク・セリング・プロポジション)」の略です。
日本語にすると、「独自の売りの提案」。1950年代にアメリカの広告業界で生まれた考え方で、今もマーケティングの土台として使われています。

USPがそろえる3つの条件
- お客さんにとっての得がはっきりしている
- ほかの会社が言っていない(言えない)
- お客さんが本当に欲しいものである
大事なのは、「自社がすごいこと」ではなく「お客さんにとって何が得か」で書くことです。
USPとキャッチコピーの違い
よく混同されますが、USPとキャッチコピーは別物です。
| USP | キャッチコピー | |
|---|---|---|
| 何か | 選ばれる理由そのもの(中身) | その理由を伝える言葉(表現) |
| 変わるか | 簡単には変わらない | 媒体や季節で変えてよい |
| 順番 | 先に決める | USPが決まってから作る |
USPが決まらないままキャッチコピーを考えると、言葉だけがきれいで、中身のない広告になってしまいます。
USPと「強み」「差別化」の違い
USPと似た言葉に「強み」や「差別化」があります。違いは、誰の目線で、どこまで言い切っているかです。
| 目線 | 例 | |
|---|---|---|
| 強み | 会社から見て得意なこと | 図をつくるのが得意 |
| 差別化 | ほかの会社と違うところ | 図で説明する会社は少ない |
| USP | お客さんが選ぶ理由(得+証拠) | 何を頼んだのか、契約前にはっきりわかる |
強みや差別化は、USPをつくるための材料です。最後に「お客さんにとって何が得か」まで言い切ったものが、USPになります。
USPの有名な例
USPは、1950年代のアメリカの広告業界で広まった考え方です。よく知られている例を見てみましょう。
ドミノ・ピザ「30分以内にお届けできなければ、代金はいただきません」
アメリカのドミノ・ピザが、かつて掲げていた約束です。「熱々のピザが早く届く」というお客さんの得と、「届かなければ無料」という証拠が、一言にまとまっています。(現在、この約束は行われていません)
M&M’S「お口でとろけて、手にとけない」
チョコレートなのに、手が汚れない。子どもに食べさせる親にとっての得が、はっきり伝わる一言です。
どちらも「自社がすごい」とは言っていません。お客さんが「それなら、これにしよう」と思える理由だけを言っています。
中小企業なら、こう考える
大手のような大きな約束でなくても大丈夫です。たとえば、次のような一言もUSPになります。
中小企業のUSPの例(いずれも架空の例です)
- 町の工務店:「工事中は毎日、写真で進み具合をお知らせします」
- 税理士事務所:「ご質問には、その日のうちに必ずお返事します」
- パン屋:「焼きたてが一番そろう朝7時に開店します」
どれも小さな約束ですが、「お客さんの得」と「守れる証拠」がセットになっています。USPは、派手さよりも確実に守れることが大切です。
なぜ中小企業こそUSPが必要なのか
大手企業は、広告費と知名度で「知っている会社」として選ばれます。
中小企業には、その予算がありません。
だからこそ、「この分野なら、あの会社」と一言で覚えてもらえる理由が必要です。USPがない会社は、お客さんから見ると違いがわからず、最後は価格で比べられます。
反対に、USPがはっきりしている会社には、こんなことが起こります。
1. 相見積もりで負けにくくなる
USPがない会社は、お客さんから見ると「どこも同じ」に見えます。同じに見えれば、比べられるのは値段だけです。選ばれる理由が一言で伝われば、お客さんは値段以外のものさしで比べてくれるようになります。
2. 紹介が増える
紹介は、紹介する人が「あの会社は〇〇だから」と説明できて、はじめて起こります。USPは、紹介してくれる人に渡すセリフでもあるのです。
3. 広告やホームページの言葉に迷わなくなる
何を書けばいいか迷うのは、伝えたいことが決まっていないからです。USPが決まれば、チラシもホームページもSNSも、そこから言葉を広げていくだけになります。
4. 社員が同じ言葉で会社を説明できる
社長と社員で会社の説明がバラバラだと、お客さんは不安になります。USPを社内で共有しておくと、誰が話しても同じ会社の顔が伝わります。
USPの作り方5ステップ
ここからは、実際に紙とペンを用意して進めてみてください。


5つとも、今日からひとりで進められるステップです。完璧をめざさず、まずは書き出すところから始めてみてくださいね。
ステップ1:「誰の」選ばれる理由かを決める
USPは、すべての人に向けては作れません。
最初に、一番来てほしいお客さんを1人思い浮かべます。
- これまでで一番喜んでくれたお客さんは誰か
- また来てほしい、と心から思うお客さんは誰か
その人の年齢、仕事、困っていたことを書き出してください。ここがぼやけると、この先がすべてぼやけます。
「なるべく多くの人に来てほしい」と思うほど、言葉は誰にも刺さらなくなります。一人に絞るのは、ほかのお客さんを断るためではありません。一番伝えたい人に、まっすぐ届く言葉を見つけるためです。
ワーク 一番来てほしいお客さんを1人決めて、年齢・仕事・困っていたことを書き出しましょう(名前は仮名でかまいません)。
ステップ2:お客さんが「選んだ理由」を集める
強みは、社長の頭の中ではなく、お客さんの言葉の中にあります。
ステップ1で思い浮かべたお客さんに、次のように聞いてみてください。
- 「ほかにも会社がある中で、なぜうちを選んでくれたんですか?」
- 「うちに頼む前は、何に困っていましたか?」
- 「頼んでみて、何が一番よかったですか?」
社長が当たり前だと思っていることが、お客さんにとっては一番の決め手だった、ということはよくあります。

お客さんに理由を聞くのは、少し照れくさいかもしれません。でも、その答えの中にこそ、強みのヒントがあります。ぜひ直接聞いてみてください。
ワーク お客さん3人に上の3つの質問をして、答えを言い換えずにそのまま書き写しましょう。
ステップ3:ほかの会社が言っていることを消す
同業の会社のホームページを3〜5社見て、どの会社も書いている言葉に線を引きます。
「高品質」「丁寧」「安心」「お客様第一」「地域密着」。
これらは大切ですが、どの会社も言っているので、選ばれる理由にはなりません。
ステップ2で集めた言葉から、ほかの会社が言っていないものだけを残します。
もし、消したら何も残らなかったとしても大丈夫です。「丁寧」という言葉は同じでも、どう丁寧なのかを具体的にすると、ほかの会社とは違う言葉になります。たとえば「丁寧な対応」ではなく「見積もりの項目を、一つずつ口頭でご説明します」のように、お客さんが目に浮かべられる形にしてみてください。
ワーク 同業3〜5社のホームページで共通している言葉に線を引き、自社の候補から消しましょう。
ステップ4:「得」と「証拠」をセットにする
残った強みを、お客さんの得に言い換えます。そして、それを信じてもらうための証拠をつけます。

たとえば
- 強み:「打ち合わせを図にして見せる」
→ 得:「何を頼んだのか、契約前にはっきりわかる」
→ 証拠:「打ち合わせのその場で図をお渡しします」
証拠は、数字、期間、実績、保証などです。「〇日で」「〇件の実績」「気に入らなければ〇〇」のように、確かめられる形にします。
ワーク 残った強みを「強み → 得 → 証拠」の3列に並べて書いてみましょう。
ステップ5:一言にまとめて、お客さんに聞いてみる
最後に、次の型に当てはめます。
「(誰)が、(得)を、(証拠)で手に入れられる会社」
先ほどの例を当てはめると、次のようになります。
記入例
「はじめて工事を頼む方が、何を頼んだのかを契約前にはっきりわかる会社。打ち合わせのその場で、図にしてお渡しします」
最初は長くてかまいません。何度か読み返して、なくても意味が通じる言葉を削っていくと、だんだん一言に近づいていきます。
できたら、実際のお客さんや取引先に「これ、うちっぽいですか?」と聞いてみてください。
「そうそう、それ!」と返ってきたら完成です。首をかしげられたら、ステップ2に戻ります。
ワーク 候補を3つまで書き出し、声に出して読んでから、お客さんに見せてみましょう。
USPづくりで、よくある3つの失敗
1. 自社がすごいことを書いてしまう
「創業50年」「最新の設備」は、それだけではお客さんの得になりません。
「創業50年だから、何が得なのか」まで書いて、はじめてUSPになります。
こう直す:「創業50年」→「50年分の施工記録があるので、古い建物でも当時の図面から直せます」のように、得まで書き足します。
2. 欲張って全部入れてしまう
強みを5つも6つも並べると、一つも覚えてもらえません。
USPは一つに絞るから伝わります。ほかの強みは、USPを支える材料として使えば大丈夫です。
こう直す:候補が複数あるときは、ステップ1で決めたお客さんが一番喜ぶものを一つだけ選びます。
3. できないことを約束してしまう
USPは、言ったら必ず守るものです。守れない約束は、すぐに口コミで広がり、かえって信頼をなくします。
こう直す:「いつでも」「必ず」と書く前に、忙しい時期でも守れるかを社内で確かめます。守れる範囲で言い切るほうが信頼されます。
USPができたら、どこで使う?
USPは、作っただけでは伝わりません。お客さんが最初に目にする場所に、くり返し出していきます。
USPを出したい4つの場所
- ホームページの一番上(会社名より先に目に入る場所)
- 名刺(肩書きの横や裏面)
- 営業資料・会社案内の1ページ目
- SNSのプロフィール欄
同じ一言をあちこちで見かけるうちに、お客さんの頭の中に「この分野なら、あの会社」という印象が残っていきます。場所ごとに言葉を変えないことが大切です。
人は「理由」があると動く
心理学では、人は何かを決めるとき、自分を納得させる理由を探すことがわかっています。
お客さんは、心の中ではもう「この会社がいいな」と感じていても、最後に「なぜこの会社なのか」を自分や家族、上司に説明できないと、決められません。
有名なのが、ハーバード大学のエレン・ランガー教授が1970年代に行った「コピー機の実験」です。コピー機の順番待ちをしている人に、先に使わせてほしいと頼みました。
コピー機の実験(順番をゆずってくれた人の割合)
- 「先にコピーさせてもらえますか?」だけ:約60%
- 「急いでいるので、先にコピーさせてもらえますか?」:約94%
- 「コピーをとらなければならないので、先にコピーさせてもらえますか?」:約93%
3つ目は、理由になっていない理由です。それでも、「〜なので」と理由がつくだけで、ゆずってくれる人が大きく増えました。人は、それほど「理由」を手がかりに動いているのです。
USPは、お客さんに「選ぶための理由」を手渡すことでもあるのです。
USPのセルフチェック(すべて「はい」なら合格)
- ステップ1で決めたお客さんが読んで、「自分のことだ」と思えるか
- 「お客さんの得」が書かれているか(自社の自慢になっていないか)
- ほかの会社のホームページに、同じ言葉が書かれていないか
- 証拠(数字・期間・実績・やり方など)がついているか
- 忙しい時期でも、必ず守れる約束か
よくある質問
Q. 強みが見つからないときは、どうすればいい?
ステップ2に戻って、お客さんの声を増やしてみてください。強みがないのではなく、まだ言葉にしていないだけということがほとんどです。
Q. USPは、一度決めたら変えてはいけない?
かんたんには変えないものですが、お客さんや事業が変われば見直します。年に一度、「今もこの理由で選ばれているか」をお客さんに聞いてみるのがおすすめです。
Q. 小さな会社でも、本当に作れる?
はい。むしろ、社長とお客さんの距離が近い小さな会社ほど、お客さんの声を集めやすく、USPを作りやすいといえます。
UNIBRANDのUSPは、これです
最後に、この記事の5ステップに沿って、UNIBRAND自身のUSPをつくってみました。
代表の栢原は、ライター、デザイナー、編集者、そして中小企業診断士と、いくつもの仕事を経験してきました。経験が多いぶん、「何が一番の強みか」を一つに絞るのは、じつは簡単ではありませんでした。
ステップ2:お客さんの声を集める
お客さんから言われることが多かったのは、次の2つです。
- 「中小企業診断士という資格が、信頼につながった」
- 「言葉づかいや、SNSの表現が好き」
ステップ3:ほかの会社が言っていることを消す
最初の候補は「会社の強みを、伝わる形に」でした。でも、これはデザイン会社なら、どこでも言っている言葉です。そこで、この候補は消しました。

じつは私も、最初は「伝わる形に」と書いていました。自分のことになると、ほかの会社と同じ言葉を選んでしまう。USPづくりで一番むずかしいところです。
ステップ4・5:「得」と「証拠」をセットにして、一言にする
お客さんの2つの声を、「得」と「証拠」に言い換えました。そして、一言にまとめたのがこちらです。
UNIBRANDのUSP
言葉もデザインも、経営戦略のひとつ。
戦略から考えて、形にするところまで。
- 得:見た目や言葉がきれいなだけで終わらず、売ることにつながる形で、会社の想いが伝わる
- 証拠:中小企業診断士として、ビジネスプランからマーケティングまで考えられる
- 証拠:言葉づかいは、SNSでの発信を見て、実際に確かめられる
社長のお話をうかがいながら、戦略を考えるところから、言葉やデザインにするところまでを、ひとつながりでお手伝いしています。
まとめ:USPは、社長の頭の中にすでにある
この記事のまとめ
- USPとは、お客さんがあなたの会社を選ぶ、たった一つの理由
- 中小企業こそ、USPがないと価格で比べられてしまう
- 作り方は「誰に」→「お客さんの声」→「他社と同じものを消す」→「得と証拠」→「一言にして確かめる」
USPは、ゼロから作るものではありません。
社長の頭の中と、お客さんの言葉の中に、すでにあります。 それを見つけて、伝わる形にするだけです。

「うちのUSPはこれかな?」と思ったら、一度声に出して読んでみてください。しっくりくる一言が見つかると、発信がぐっとラクになります。
自社の「選ばれる理由」を、一緒に言葉にしませんか
UNIBRANDでは、言葉もデザインも経営戦略のひとつと考えています。社長のお話をうかがい、戦略から考えて、言葉やデザインの形にするところまでお手伝いしています。
「自分では強みがわからない」「言葉にしようとすると、ありきたりになってしまう」。
そんなときは、お気軽にご相談ください。
