夢の中の話

22歳だった私には27歳の上司はすごく大人に見えた

東京のおしゃれバー

私が新卒で入社した会社では、それまで中途採用しかおこなっていなかったため、私たちが新卒1期生だった。私たちが入社するのとほぼ同時に役員として営業部長に27歳の男性が着任した。

法人営業の部署に採用された私は彼の下で仕事のいろはを教わった。今30歳を超えた私が27歳という年齢だけを見れば、まだ社会のなんたるかを少しかじっただけの若者だけれど、当時22歳だった私からすると27歳のその上司はすごく大人に見えた。
 
彼は日本全国誰もが知っているフリーペーパーの創刊に携わった人だった(はず)。仕事ができて、「創刊時に渋谷のお店をほとんどまわったからどこのお店も知り合いばかり」と言ったセリフも、新米東京人の私の胸に刺さり、周りを見ればリクルートスーツばかりの社会人なりたての私にとってはオシャレな茶色い革靴もかっこ良く見えて全てが憧れだった。

私が朝から晩まで働きづくしで休みの日にも出勤しているのを見た上司が「せっかく東京に来たのに全然遊んでなくないか?今度の休み、渋谷でも行くか?」と声をかけてくれた。すぐにその週末の約束をした。憧れの上司だけれど、やましいことなんて何もないけれど、それでもちょっとワクワクして同期には言えないまま当日を迎えた。
 
当日、おめかししていたらギリギリの時間になってしまったけれど靴はもう決めてあった。

少しでも背伸びしたくて、ピンクのツイードで後ろにリボンが付いたちょっと高めのヒール。ヒールはあまり履き慣れていなくて渋谷の街を歩き続けるには不安があったけれど、一番大人っぽいものをと思い選んだ。

靴箱から取り出すと、後ろに付いているリボンが取れかけていることに気づき「なんでこんな日に?!」と焦りながらもなんとか崩れているのがわからないようにして家を出た。
 
渋谷のどこで待ち合わせをしてどこに連れて行ってもらったかなんてもう覚えてないんだけれど、ちょっとオシャレなカフェに連れて行ってもらいカウンターに案内された。打ち解けていない相手と向かい合って座るのが苦手な私は、昔から横並びになれるカウンターか好きで少しほっとしながら席に着いたことをよく覚えている。
 
聞きたいことはいっぱいあった。なぜこの会社に入ろうと思ったのか、27歳でなぜ役員になれるのか。そうでなくても好奇心旺盛な私は、目の前にいる私よりも大きな世界を生きてきたであろう上司に興味津々だった。

質問攻めにも快く答えてくれる姿も、いちいち「ステキな考え方だな」と思わせる返答も大人だった。ごはんも食べ終わってコーヒーだかカフェラテだかを飲んでいる時、こんな貴重な機会に聞き忘れをしてしまわないように、私の中にある質問BOXを確認したらもう1つ聞きたいことが残っていた。
 
「夢はなんですか?」

「俺、世の中のお母さんってすごいと思ってるんよね。俺が母親のこと尊敬しているっていうのもあると思うんだけど、日本の女性やお母さんがもっと活躍できるような、輝けるような仕事をしていきたい。」

私は「自分も働く女性になるから、なにか働く女性をサポートできる仕事に就けたらいいな」そう思って選んだ会社だった。私は女性だからそう思って当然だろうと思っていたけれど、男の人でそんな風に考える人がいるのは軽い衝撃であり、嬉しかった。
 
その後はもう、私の心の中にこっそりしまってある質問BOXには「聞いておかなければならないこと」は何もなくて、「休みの日はいつも何してるんですか?」と私が聞いたのをきっかけに「レコード店まわってる」という話になりセンター街にあるレコードのお店に連れて行ってもらった。音楽なんて全然知らない私には全くわからない世界だったけれど、そんなことよりも人生で初めてのセンター街にドキドキしていた。

その後、小説のようなドキドキする展開は何もなくて駅まで見送ってもらい「また明日から頑張ります」と言って手を振った。
 
先日、たまたまFacebookでその上司の名前を見つけて、彼のプロフィールを見ていると今は独立して人材系の会社を経営しているらしかった。会社のサイトに載っているメッセージを読んで「あー、あの時話してくれたこと、実現させたんですね」と懐かしがりながら心の中で拍手を送った。

もしもいつか、どこかでまた会うことがあったなら、その時に胸を張って会える自分でいたいと思った。
  
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と8割くらいフィクションでお送りしましたが、そんな記憶を思い返したのは、今、ある「女性のためのヨガの講座」のPRを担当させてもらっていて、その講座が存在する意味を考えたら、「日本の女性をより輝かせること」という答えが出て、この記憶が呼び起こされたから。

私も頑張る女性のひとり。
だからこそ、同じように頑張る女性に輝いていて欲しい。